銭湯民族への道
初めてムスメをお風呂に入れた時のお話です。
海外では例え娘であれ、異性をお風呂に入れるのは虐待を疑われると言う一文を育児書で読んでしまい、泡食った日もありましたが、とは言え、此処は日本。そして、「父親に求められる育児」の第二位は「お風呂に入れる」だそうです*1。
なお、ムスメは既に一ヶ月検診後のため、沐浴ではなく入浴で良くなっている為、ベビーバスの出番はありません。
そして、恐ろしいことにこのコロナ禍のお陰で両親教室は開催されておらず、ムスメの入浴については、ぶっつけ本番を余儀なくされた、という恐ろしい事態に陥っていました。
とは言え、下準備は全て妻がしてくれていたので、僕はムスメの身体を洗って、お湯につけて、上がる際にスライドベッドの上でちょっと身体を拭くぐらい……の筈でした。
まさかそれがこんなに大変だとは。
もっと大変な沐浴の時代は妻一人でムスメの身体を洗っていたと言うのだから、もうちょっと労ってあげねばと、思う次第です。
●ムスメの身体を洗うのこと
これは思ったより簡単でした。
髪も身体もベビーソープで洗って上げれば良いだけです。首周り等、皺があるので皺を伸ばしながら、泡立てた泡を刷り込んでいくだけ……そう思っていた時期が僕にもありました。
まず、当然ながら、赤子と言う存在は生き物です。しかも「洗っている間、大人しくなる」は周りと意思疎通が出来る様になってからです。
両手両脚とピコピコ動かします。と思ったら何故か腕を突っ張って脇を洗わせてくれません。泡のついたままの指を舐め、口の周りを泡だらけにしたりもします。
何より、首が据わっていないので、片手は常に首を支えていなければなりません。
あの時ほど、腕がもう一本有れば! と思わずにいられませんでした。
右手で首を支え、左手で作った泡を髪や身体に擦り付けていく……と、思いきや、右手で支えている後ろ首は左手が入り込みません。仕方なく、泡塗れの左手で首筋を支え直し、こまめに揺することで泡を擦り付けます。
――うん、無理だ。
幸い、妻がお風呂用のマットを買っていた為、そこにムスメを仰向けに横たえ、身体を洗う作戦に出ました。
ああ、両腕を使えるのはとても助かる――。
背中は洗いづらいですが、横向きにするだけで背中とお尻にアプローチ出来ます。反対を向かせて側面を洗えば、何とか表と裏と横はカバー出来……うーん、多分、大丈夫。
「上手く洗えているのか?」
これについては何処かの育児書に書いていた「未来の自分にバトンタッチ」を思い出しながら、汚れやすいところ(お尻や手足、首)は重点的に。見落としていたら明日のお風呂でリカバリー! と思い直すことで心の平静を保っていました。神経質になったら多分、精神病みます。それよりもまずはお風呂をしっかりとこなすこと。
なお、洗い終わった後ですが、当初はかなり弱流にしたシャワーで洗い流していましたが、その内、浴槽から汲んだお湯を手桶で掛けることにしました。絞って出しているとシャワーのお湯の温度が低いものになってしまうと言うことと、その、えーっと。
うめ先生のところの娘さんがシャワー嫌いになっているエピソードが頭の中を駆け巡り、そして手桶に頼ることになっちゃったのでした*2。
お湯の中のムスメ
身体の泡を流してしまえば、次はお風呂です。
横抱きにし、首から下をお湯につけるように――げげっ。0歳児ってお湯に浮いちゃう!
慌てて脚を支えていない手で押さえ、縦にお湯につけます。
これ、首が据わったら楽になるのかなぁ……と考えながらも*3、ゆっくりと180秒――3分を数えて終了。
スライドベッドの上に敷かれたバスタオルの上にムスメを乗せ、お包み状にムスメを包んでお湯を吸わせ、ミッションコンプリート!
「ねぇ、保湿した?」
「あっ!」
ベビーオイルは塗れた身体に塗る物ですが、既にムスメはバスタオルの中です。
「まぁ、ベビーローション塗っとくわ」
妻がリカバリーをしてくれたものの、痛恨のミスでした。とほほ*4。
ムスメはお風呂を上がると着替え→お薬(便秘薬)→授乳のコンボなので、その間、僕は晩ご飯の準備をしなくてはなりません。
この間、約20分。その間に自分の身体を洗い、お風呂から上がって調理済みのおかずをレンチンしたり、コンロの火で温め直したりしつつ、バタバタとムスメのお風呂が終わるのです。
時にムスメよ、何故お包み状態になると急にテンション上がるのか――。
●余談:銭湯民族とは
「でも、ムスメはお風呂が嫌いじゃないようでほっとした。血かな?」*5
おんせん県出身として、また、ムスメも大分人である以上、温泉好きであって欲しいと思う。
「まー、そーかも」
由緒正しく島津由来の系譜を持つ妻は頷いた後、ぽつりと。
「戦闘民族シマヅ寄りじゃなくて温泉民族で良かったと思うけども」*6
「あ、つまり、銭湯民族になっちゃうのね」
……。
はい、お粗末。